今から10年以上も前、二つ前の職場が東陽町にあった。
当時東陽町界隈では有名な中華料理屋(われわれはラーメン屋だと考えていた)に末広があった。
そこの味噌ラーメンが評判で、確かにおいしいし、量も沢山あったということもあり当時は三日に空けず通ったこともあった。
当時からわれわれの間でも有名だったのが、料理人の親父さんが怒鳴り散らすことと、フロアのママさんのユーモアあふれる接客。
ほかにフロアには3人のおばちゃんたちが元気に働いていたものだ。
実は現在の職場も東陽町のすぐ近くなのだが、昔のように昼食で量を食べることもなくなったため、末広に行くこともなかった。
しかし今日はなぜか、味噌ラーメンが食べたいと昼前から思い始め、ふらりと一人で末広に足を向けてみた。
当時と同じように、行列ができている階段に並び、順番を待っていると、当時と変わらないあのおばちゃんが、前から順番に、そちらは何人様? 次の方は? と人数を確認に来る。
私の顔を見ると、おばちゃんは私のことを覚えていてくれて、あら~久しぶり。今日は一人?と声をかけてくれた。
思わずお久しぶりですと、こちらも返す。
懐かしく味噌を頼むと、当時と同じ作り方で、中の親父さんが、中華なべを振っていた。残念ながら親父さんが当時のように怒鳴り散らす姿は見られなかったが、非常に懐かしい味がした。
帰り際の会計は必ずママさんの仕事。
そこでも、味噌一丁と会計を頼むと、ママさんがお久しぶり。転勤だったの?お仲間は?と声をかけてくれた。
あの当時この店には必ず4~6人で連れ立ってきていたことまで、覚えてくれていたようだ。
こんなことがあると、また来て見ようかなという気になる。
懐かしい光景に出会えて、ひとときほっとした気分になった。
ところでこんな気分で食事をしていたのだが、繁盛店であるので、当然の如く相席になる。
私の目の前には、サラリーマン風の男性二人。
部長と課長といった関係であろうか? 部下の話をしていた。
しかし気になったのは、課長風のちょっと若目の男性のほう。
ご多分にもれず味噌ラーメンを食べていたのだが、その手元。いい年をした親父が、箸を持てないのだ。バッテンに握った箸で不器用にラーメンやもやしを掬う。
見ていて情けなくもあり、どんな躾を受けてきたのかとはなはだ疑問に思ってしまう。
私の勝手な観念ではあるが、端も正しく持てないやつが、なぜ部下の仕事の出来不出来を論じているのか?
ちょっと不快になる一瞬であった。
こんなことを思う私は、何様かといわれればそれまでだが、なんとなく不快だった。
